会員有志から、おススメ本をおひとりにつき1冊だけ、推薦コメントを頂き、会員有志に推薦コメントを読んでいただいて「自分はこれを読みたい」と思われた本に、投票していただく企画です。
今月のご投稿は4本でした。初めて投稿してくださった方もいらっしゃいました!
ありがとうございました。
では、発表と参ります~♪
面白そう♪と思われた皆さま、ぜひ手に取ってみてくださいませ。
次回の開催は12月となります! 会員の皆さま、面白い本を読んだらぜひおすすめを~♪
第1位:『考える、書く、伝える 生き抜くための科学的思考法』(仲野徹著、講談社(講談社+α新書)) 推薦者:尼野ゆたかさん
私事で恐縮ですが、仲野先生とは面識があります。
どこの馬の骨とも知れぬ僕にも分け隔てなく接してくださる、とても素敵な方でした。
その気さくなお人柄は、この本にも端々に滲み出ているように感じられます。しかし、僕個人としては先生の教育者としてのお姿が強く印象に残りました。
本書は実際のゼミの内容を元に、書名通り「考えるための基本・書くにあたって必要な点・伝えるための勘所」を説きつつ、科学的思考法も身につけられるようにする……という構成ですが、小手先の技術を授けてそれでよしとすることはありません。「学生にとっての大学とは、学びかた、そして、学問する姿勢を身につけるための場であるべき」と冒頭にあります通り、学ぶとはどういう事かという部分を常に押さえた「ガチ」の一冊でした。
先生は権威主義的になられることはありませんが、しかし指導すべき点はきっちり指導されます。なにせ学問ですから。「出す課題は鬼やん」という学生の叫びは現実に即したものでしょう。
そして、それだけ真摯に向き合っていらっしゃるのが分かる故に、ラストの手書きメッセージは本当に胸に響きます。
では読んでいて息詰まるような、読む者に対峙を厳しく迫るようなものであるかというとそんなことは全くなく。
最初に気さくなお人柄と申しましたが、この本自体が気さくです。先生一流のユーモアをふんだんに織り込みつつ、論理は常に明快。最後まで楽しく読めます。
あ、あともう一つ感嘆させられた点がありまして。
それは、「自分で至らぬと思った点は隠さない」「失敗と感じた点はオープンにする」という姿勢が貫かれているところ。
先生自身が、授業の度に試行錯誤しその結果から学んではるんですよ。すごい……尊敬の念を抱いてしまいます。
というわけで、楽しく聴講いたしました。
オンライン飲み会での本の紹介について、学んだことを活かすべく実はコツコツ改善を試みております……頑張ります……
第2位:『なぜアーティストは壊れやすいのか?』(手島将彦著、SW)推薦者:藤井博子さん
同級生で芸術大学に通う友人がいて、”何を目指しているんだろう。”とずっと考えていた。
最終的な目標は何なのだろうと。そして、どうゆう経緯か忘れてしまったが、「死だ!」と答えがでた。
本書の著者は、ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。
数々のミュージシャンを身近で見てきた経験により書かれた一冊。
アーティストとは感受性が豊かすぎて、悪い情報に対しても深く受信してしまう。なので、心身双方に負担を負いやすい。そして、まわりとちょっと違う少数派であるが故に多数派からの圧力をうけ、「壊されやすい」し「周囲が壊してしまう。」
このダイバーシティの時代にまだまだ苦しんでいる方がたくさんいて、ミュージシャンでメンタルヘルスの問題に直面している方々もたくさんいる。
メタリカやビーチボーイズ、ビートルズ、ビヨンセそしてSHISHAMOまで。
苦悩していないとよい作品はうまれないのか?そんな通説に関しては、ジェイムス・ブレイクは否定している。実際にメンタル疾患に苦しんだブルーススプリングスティーンの比喩が苦悩からの答えを導いてくれる。
かつ、発達障害や、LGBTまで踏み込みひとりひとりが自分を尊重して生きていけることを目指し、数々の具体的な解決策を掲載し本書は幕を閉じる。
※各章にQRコードが掲載されており、そちらを読み込むとSpotifyのプレイリストにアクセスできるというサービス付き☆
第3位:『老神介護』(劉慈欣著、大森望・古市雅子訳、角川書店) 推薦者:三瀬弘泰さん
世界的ベストセラー『三体』を世に送り出した著者の短編集です。
5つの物語が収録されています。
表題作は地球と人類を創造したと言う自称"神"たちが老年期に入り、自らが産み出した人文明に扶養してもらいにやってきたという物語。
神様の数が20億人!地球を覆い尽くす神々の宇宙船団!
地球はみすぼらしい姿となった神様たちを受け入れます。
しばらくは楽しい共同生活を過ごせていたが、それもいつしか終わりを告げる。
そして彼らはどういう結末を迎えるのか?
他にも蟻と恐竜の共存の物語『白亜紀往事』では、恐竜文明の複雑なシステムを蟻連邦による細かなメンテナンスが必要不可欠とする世界を描きだす。
恐竜社会から核兵器を廃絶させるために蟻たちが考え出した方法とは一体なんなのか。ここにアイデアの冴えが光ります。
私が一番好きでオススメなのは最後を飾る『地球大砲』
74年の人工冬眠から目覚めたとある技術者は地球環境が激変していることを目のあたりにする。
資源枯渇がもたらすけいざいてき衰退を避けるために実行された『何曲裏庭化構想』が深刻な事態を引き起こしたのだ。
そしてこの立案に冬眠から覚めた技術者の息子が関わっており、目覚めた男は民衆より責任を追及されることに。
この『南極裏庭化構想』というネーミングセンスが最高にチープなのに中国で実際にやってしまいそうな可笑しなリアリティがあります。
タイトルの『地球大砲』の意味が分かるとさらに面白い!
どの作品もそれほど分量が多いわけではありませんが、スケールのデカさは『三体』にも負けず劣らず。
日本の初期SF作家が書いていたようなスケールの大きな、まるでスペースオペラのような作品を読むことができます。
物語としてのホラ、それも極上の大ボラが存分に楽しめる作品です。
『三体』まだ未読でどうしようかなー?と思っている方はこちらを試しに読んでみるのもいいかと思います。
第3位(同率):『#真相をお話します』(結城真一郎著、新潮社)推薦者:吉村弥恵さん
ラストで明かされる「真相」へと突っ走る、5編からなるミステリ短編集。
初っ端から不穏をぶち込んで捻って落とす、短編ならではの、濃くスピード感のある読書が楽しめます。
中でも、大学の同窓生3人のリモート飲み会から始まる「三角奸計」と、のどかな島暮らしをしているかに見える少年たち(主人公の名前は、まさかのチョモランマくん!)の秘密が暴かれ、思わず二度読みしてしまう「#拡散希望」が、時代を反映していておもしろいです。「今」を鮮やかにミステリで切り取って仕立てた作品。現在進行形で読むことをおすすめします。
本作だけではなく、この3年ほどの間に生まれた本は、刹那に読み手が受けなくてはならない焦燥感があります。どの口が言うのかですが、積んでいる場合ではないです。
今の時代のフィクションもノンフィクションもナマモノです。積んでいる場合ではないです。自戒を込めて二回言いました。
作者の結城真一郎さんは、東大法学部卒。つい最近、テレビ番組「ぼくらの時代」で、東大法学部卒の同世代小説家トリオとして、新川帆立さん、辻堂ゆめさんと対談されていました。その際に、単行本のタイトルを『#拡散希望』で考えていたものの、SNSで広く発信したい場合につけるハッシュタグと混同されるため、『#真相をお話します』になったのだと語られています。出版業界の広報に、SNSが欠かせない時代ならではのエピソードですね。