会員有志から、おススメ本をおひとりにつき月に一冊だけ、推薦コメントを頂き、会員有志に推薦コメントを読んでいただいて「自分はこれを読みたい」と思われた本に、投票していただく企画、第二回です。
皆さま、面白そうな本を上げてこられますねえ!
師走のお忙しい時期に、投稿・投票にご協力くださった会員の皆さま、ありがとうございました!
では結果発表です。
アンテナにびびびっと届くものがありましたら、お手にとってみてくださいね~。
第1位 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(アンディ・ウィアー著/早川書房) 推薦者:三瀬弘泰さん
『火星の人』(映画化名"オデッセイ")で火星サバイバルを描いた著者の最新作!
昏睡状態から目覚めた主人公は記憶喪失のまま宇宙船に乗っていることに気がつく。
徐々に記憶が覗く甦り、自身が地球の危機を救うために太陽系を飛び出したクルーの1人であることを思い出す。
なんと地球は謎の宇宙生命体によって太陽のエネルギーが奪われ氷河期になる危険に!
宇宙船<ヘイル・メアリー>号にて目的地クジラ座タウ星系を目指すなか同じく故郷を救うためにやってきた異星人と遭遇!
彼らは自分たちの惑星を助けることができるのか!?
星系規模の危機!
異星人とのファーストコンタクト!
前半は記憶を取り戻すミステリー調。
後半はSFギミックがこれでもかと投入されます。
ラストは溜め息をつくような満足感。
読後感はジェイムズ・パトリック・ホーガンの『星をつぐもの』に匹敵しました。
2021年12月に発売ですが最後にこんな傑作を刊行するとは!
今年の早川書房はスゴかったが締め括りはもっとスゴかった!
SF好きにはもちろんミステリファンや工学ファン、人間ドラマが読みたい人にもオススメ。
ビル・ゲイツが今年の5冊に選んだのも納得の一冊です! (推薦者:三瀬弘泰さん)
第2位 『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』(著者:宮田珠己/画:網代幸介/出版社:大福書林) 推薦者:オガワメイさん
私がこの本を知ったのは装画を担当された網代幸介さんの個展です。
いいなあと思って手にしたのですがちょっと高かった(2,750円もする)のでその日は諦めて、図書館でリクエストを出して読みました。これが想像以上に面白かったので、結局買いました。
著者は旅エッセイなどを手がけていらっしゃる宮田珠己さん。
苔を愛でながら地味な暮らしをしているアーサー・マンデヴィルのところに、教皇から呼び出しがかかるところから物語スタート。亡き父、ジョン・マンデヴィルが書いた『東方旅行記』(←実在)を読んだ教皇から、プレスター・ジョンの王国を探すように命じられます。しかし、アーサーの知るところでは、父は東方などへは旅をしたことがなく、これはうそっぱちの旅行記。
結局断れず、アーサーは、弟と、使いの修道士の三人で、存在するはずのない王国を探すために旅立ちます。
道々で、父の旅行記をなぞるような奇妙な体験をし、命の危機にさらされながら、一行は旅を続けます。
果たして、プレスター・ジョンの王国は見つかるのか!
ユーモラスな展開と、終盤加速する馬鹿馬鹿しさに、心がくすぐられるような感覚があります。
さらに、この本には網代幸介さんが描いた絵巻物? がついています。網代さんは、小さい頃から自分の中にある世界(通称・アジロ王国)をこの世に紹介する唯一の表現者。網代さんの描く絵は言語・宗教・歴史に至るまであちらの世界のもの。宮田珠己さんの世界観にどう合わせてくるのか? と、これが、まるでこの冒険譚がアジロ王国の出来事であったのかと錯覚するほど調和します。
大島依提亜さんの装幀も相まって、この本全体が胡散臭い旅行記のようなのです。
まだの方、ぜひ読んでみてほしいです。(推薦者:オガワメイさん)
第3位 『陰陽師の解剖図鑑』( 著:川合章子 イラスト:ほしのちなみ 出版社:エクスナレッジ) 推薦者:尼野ゆたかさん
先日のイベントの帰り道、参加された会員様から小説の参考文献の探し方について質問して頂くということがありました。
自分は素人でもそのテーマをざっと把握できる本を読み、その本の参考文献から読んでいくという「学部生かよ!」みたいなやり方を軸にしています。
参考にしてよい書籍かどうかを辿るにあたって手堅いやり方だからなのですけど、 信頼性で言うなら、たとえば日本史だと吉川弘文館様やミネルヴァ書房様など、お名前で安心して手に取れる出版社様はやはりあります。
勿論他にも信頼の置ける出版社様は沢山存在しますが、今回は幅広いテーマを扱っているという点からエクスナレッジ様を紹介します。
建築系の雑誌や書籍を取り扱う出版社であるエクスナレッジ様ですが、一方で「解剖図鑑」というシリーズを発売してらっしゃいまして、 宝塚歌劇団から日本の装束まで、百人一首からメンズファッションまで、その筋の専門家を起用し、分かりやすく解説されています。
その中から、今回は今年の8月に刊行された「陰陽師の解剖図鑑」を。
エクスナレッジ様といえばTwitter上で営業様の宣伝ツイートがしばしば爆発的にバズることでも有名で、この陰陽師の解剖図鑑の宣伝もバズっていたので、見かけたという方ももしかしたらいらっしゃるかも。
陰陽師の歴史を概観しつつ、安倍晴明や蘆屋道満のような有名どころをピックアップし、更には周辺の知識も押さえるという充実の構成ですが、ふんだんにイラストを使用して読みやすく記述しつつ、なおかつ150ページ以内にまとめるという見事さには感嘆させられます。
歴史の荒波に翻弄されつつも必死で生き延びる姿、つまり歴史上における陰陽師の本当の姿を浮き彫りにしつつ、平安京の怨霊や安倍晴明の伝説にも触れて読み物としての楽しさにも留意するバランス感覚など、小説での「リアリティ」と「架空」の配分の参考になるなあとも。
エクスナレッジ様、要注目ですよ~。(推薦者:尼野ゆたかさん)