数学に人生を捧げた数学者たちの鮮烈な人生を描いた『永遠についての証明』(KADOKAWA)でデビューした岩井圭也さん。今年は、1月にマジックリアリズム(岩井さんのこの表現に膝を打った視聴者は少なくなかったはず!そうそうファンタジーではしっくりこなかった!)小説『竜血の山』(中央公論新社)が発売され、続く4月には、新刊『生者のポエトリー』(集英社)が発売、また『夏の陰』(KADOKAWA)が文庫化されました。
今回は、最新2作のお話を中心に伺います。
岩井さんの作品は、「持つ者と持たざる者」の物語と評されることがあるそうです。対照的な者たちの対峙の物語とも言えるでしょう。『夏の陰』では、犯罪加害者の息子と被害者の息子の対峙に息を飲みました。表紙で明らかなように、剣道が重要なファクターなのですが、なんと岩井さんご自身が剣道4段!道着や練習風景、白熱した試合に至るまでの細かい描写、2人の主人公が竹刀の切っ先を交わす緊張感の背景に、ご自身の体験が反映されているのですね。そして、加害者・被害者家族の「両面から書かなくてはならない」と思われたという岩井さん。本作既読の方は、その「両面」が一枚絵になる瞬間を思い出して、ハッとしたのではないでしょうか。
続きまして『生者のポエトリー』。日本では「ポエム」という単語が、斜に構えて揶揄する対象になりやすく、岩井さんはそれを良しとしないことをお話くださり、画面の前で激しく頷きました。もちろん岩井さんは詩を読まれるとのことで、お好きな詩人に、井坂洋子さんや最果タヒさん、水沢なおさんなどのお名前が挙がりました。
ポエトリーリーディングにある「詩を人に届ける力」と、詩を登場人物の感情の発露として取り込むことで、「言語化できない感情」を小説にする企みは、読み手にバッチリ響いています!
岩井圭也さんご自身のポエトリーリーディングも、ぜひ聴きたいですね。なんだか実現しそうな雰囲気でした。『生者のポエトリー』から何篇か選ばれるのかとわくわくします。
実現のきっかけになりそうなラジオ番組はこちら(岩井圭也さんのTwitterより)
今後のリリース情報(今年はさらに2冊刊行予定)やイベント出演情報などは、岩井さんのTwitterをチェックしてください(『生者のポエトリー』フランス語版の出版が実現しますように!)。
最後のターンは、作家岩井圭也をつくってきた本について。町田康さんの『告白』や、沢木耕太郎さんの『敗れざる者たち』などが挙がり、ご自身の作品に与えた影響にも言及いただきました。
90分に渡り、たっぷり貴重なお話を伺い、ここに全てを書くことはできませんので、全編ご覧になりたい方はデジタル・ケイブにご入会ください。過去1年間のイベントアーカイブ動画を自由にご覧いただけます。
岩井圭也さん、ご出演誠にありがとうございました!
デジタル・ケイブスタッフ 吉村弥恵