「9月くらいから名著が出始めたんですよ」
イベント冒頭で、コロナ禍の出版業界の状況に触れた、東えりかさんの言葉にグッときた。昨春、様々な業界が混乱に陥り、出版もその歩みを一旦止めた。打ち合わせもできず、印刷工場だって動いていない。ではその時、書き手はどうしたか。
「一生懸命書いたんです」
締め切りにとらわれず、たっぷり時間をかけられるのはよいだろう。でももしかしたら、出版されない未来が待っているかもしれない。あの春は何もかもが曖昧で、誰も正解を知らなかった。しかし、ことノンフィクションにおいては良い結果となり、読みたい本が多すぎて、東さんの積読は、大変なことになっているそうだ。東さんには遠く及ばないであろうが、我が家の過去最高の積読の山を眺める。この層が厚くて熱いのには、確かな理由があったのだな、と思う。
本の紹介は、やはりコロナ関連からスタート。中でも『感染症 広がり方と防ぎ方 改訂版』井上栄著(中公新書)は、一家に一冊必要なのでは!「日本語の発音は、飛沫を飛ばしにくい。それが世界に比べ感染が広がりにくかった一因」と言われて、思わず五十音を口にしてみる。なるほど。
その後も、「社会」「生き方」そのものの本を、多数ご紹介いただいた。16冊紹介されて、イベント終盤に「まだ10冊近くある」とおっしゃるから驚く。東さんが副代表を務める、書評サイト「HONZ」(https://honz.jp/)では、本屋に書籍が並んだ次の日に、書評があがることもあるとか。そのスピード感が、溢れるほどの冊数を生むのですね!
また、東さんは「付箋でフサフサ」にして本を読み進められるそう。にこにこと「フサフサ」を繰り返されていて、紙の本への愛を感じた。電子書籍をフサフサにはできませんもの。紹介された本を読んで、同じく「付箋でフサフサ」にするのが、目下の楽しみ。全部読みたいけれど、ひとまず『こどもホスピスの奇跡』石井光太著(新潮社)と『食べることと出すこと』頭木弘樹著(医学書院)を購入した。
東えりかさん、一時間半あっという間でした。楽しく濃密な時間をありがとうございました!
(Y.Y)