吉村弥恵です。今回は、『信仰』村田紗耶香著(文藝春秋)を紹介します。
2年ぶりの単行本が出ると知り「久しぶりにクレージーさやかに殴られたい」と手に取った本書は、短編小説とエッセイが計8編収められている。
エッセイは内2編らしい。ん?
「クレージーさやか」とキャラクター化されラベリングされることと、「多様性」を受容することの違いに気づき、「吐き気を催すくらい世界の多様性が進んでいきますよう」と願う「気持ちよさという罪」の他に、エッセイがあった?
4人のクローン夏子との共同生活を描いた「書かなかった小説」だろうか。言われてみれば、作者の異なる自己が、意識下で具現化したようにもとれる。夏子と夏子でまぐわうのも、とても村田沙耶香らしい表現だし、そもそもタイトルが、これはエッセイだと示している?とあれやこれや考え、再読し、観念して巻末の初掲載一覧を見てようやくわかった。
「クレージーさやかに殴られたい」という私の願いは、すんなり叶ったのである。
そして、作品に心から敬意を表して、人前でこの名称を使うのは封印しようと思う。私もまた特異な役割を作者に期待し、自分に都合よくラベリングしているに他ならないからだ。
最後に、本書の大きな特色として、8編中5編が英訳や独訳の原文なことをあげたい。
中でも「地球温暖化と社会的な不平等の相互関係」をテーマにした「Survival」の原文「生存」がアメリカでどう受け入れられたのか知りたいところである。よしきたコレなテーマを受けて、村田ワールド全開なのだ!
(『信仰』を読んだらぜひ、声をかけてください。語り合いたくてうずうずしています!)