- 書籍名:老神介護
- 著者名:劉慈欣
- 翻訳者:大森望・古市雅子
世界的ベストセラー『三体』を世に送り出した著者の短編集です。
5つの物語が収録されています。
表題作は地球と人類を創造したと言う自称"神"たちが老年期に入り、自らが産み出した人文明に扶養してもらいにやってきたという物語。
神様の数が20億人!地球を覆い尽くす神々の宇宙船団!
地球はみすぼらしい姿となった神様たちを受け入れます。
しばらくは楽しい共同生活を過ごせていたが、それもいつしか終わりを告げる。
そして彼らはどういう結末を迎えるのか?
他にも蟻と恐竜の共存の物語『白亜紀往事』では、恐竜文明の複雑なシステムを蟻連邦による細かなメンテナンスが必要不可欠とする世界を描きだす。
恐竜社会から核兵器を廃絶させるために蟻たちが考え出した方法とは一体なんなのか。ここにアイデアの冴えが光ります。
私が一番好きでオススメなのは最後を飾る『地球大砲』
74年の人工冬眠から目覚めたとある技術者は地球環境が激変していることを目のあたりにする。
資源枯渇がもたらすけいざいてき衰退を避けるために実行された『何曲裏庭化構想』が深刻な事態を引き起こしたのだ。
そしてこの立案に冬眠から覚めた技術者の息子が関わっており、目覚めた男は民衆より責任を追及されることに。
この『南極裏庭化構想』というネーミングセンスが最高にチープなのに中国で実際にやってしまいそうな可笑しなリアリティがあります。
タイトルの『地球大砲』の意味が分かるとさらに面白い!
どの作品もそれほど分量が多いわけではありませんが、スケールのデカさは『三体』にも負けず劣らず。
日本の初期SF作家が書いていたようなスケールの大きな、まるでスペースオペラのような作品を読むことができます。
物語としてのホラ、それも極上の大ボラが存分に楽しめる作品です。
『三体』まだ未読でどうしようかなー?と思っている方はこちらを試しに読んでみるのもいいかと思います。