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2022年3月のおススメ

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福田和代

皆さまのおススメ本を、このトピックへの返信として教えてください♪
いちおう、お約束を決めておきますね。

・ひと月に、おひとり一冊まで
・必要な情報は、書名、著者名、出版社名、おススメコメント
 (おススメくださった会員さんのお名前もわかる形で)
・おススメコメントの長さは、800字まで(800字より短いのは問題なし!)
・対象となる本は、書店やネット書店で新刊が手に入るもの(変更しました!)
・ただし、主催者・福田和代の本は除く(笑)
・会員作家さんの本は、ぜひ全力でおススメしてください♪
・締め切り 2022年3月20日(日)

締め切り後、会員の皆様に投票をお願いして、上位3冊をお勧めくださった方に、図書カード5,000円分をお送りいたします。
上位3冊は、おススメコメントとともに、デジタル・ケイブのWebサイトでご紹介させていただきますね!
(同率の場合は……ジャンケンかな!?)

ご応募お待ちしております♪

10件の返信
十三不塔(早川大介)

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 角川書店

 

本作は、SNSサービスを提供する先進的な企業に就職したい六人の大学生の姿が虚構と真実を織り交ぜつつ描かれます。

奇妙に入り組んだ採用試験の最中に起こった事件が前半にあり、その解明が後半部分に置かれているのですが、他者を蹴落とす競争意識と六人が持つ醜悪な過去を読者はぞんぶんに見せつけられます。若さゆえの痛々しさもたっぷり。

ミステリなのでネタバレはできませんが、後半になるとすべての読者がパースペクティヴが反転する瞬間が起こります。これは静かで感動的なカタルシスです。

筋立てはこうです。この企業の試験は、グループミーティングのあと、皆が自分以外の誰かに一票入れること。最多票の人間が合格。自分以外の人間に利する投票をせねばならないミーティングの中でひとつの封筒が見つかる。その中には六人の過去の悪行が詰め込まれている。このパンドラの箱を解き放つことで試験の行方は予想もしない方向へとズレていく。

後半は、件の試験から時間が経ち、社会人となった当時の面々を合格者が訪ねるパートとなっています。殺人も探偵もいないこの作品世界で、合格者である彼あるいは彼女といっしょに読者は取りこぼしていた事件の真相に近づくことができます。

ここらでようやく水面下にあったテーマが一気に浮上します。

つまり人が人を選ぶということです。

採用試験や面接、コンテスト、オーディションなど。ひとりの人生を変えてしまうほどの裁定があまりにも軽々しく為されていることに寒気が走ったことはないでしょうか。もちろんいくら注意深くあったところで神さまや機械でもない我々が完璧を期すことは可能なのか。

就職活動というある種残酷なモチーフを使いながら、とびきり面白く、心に響く物語。それが『六人の嘘つきの大学生』です。

読後に誰かと語り合いたくなるパワーも格別。是非読んでみてください。

 

十三不塔

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2 返信
福田和代

十三不塔さん、ご投稿ありがとうございます!

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十三不塔(早川大介)

はじめて投稿させて頂きました。よろしくお願いします!!!

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三瀬弘泰

『時の子供たち(上下)』エイドリアン・チャイコフスキー/内田昌之訳/竹書房文庫

毎年刊行される早川書房の『SFが読みたい!2022年版』海外編第二位に輝いた作品です。

内容は地球の終わりを予測した人類は新たに惑星を改造(テラフォーミング)して地球の生物の知能強化を促すナノウィルスを散布し、猿を人類の後継者として人為的に進化させるという計画を立てる。

しかしその行為自体に反対する過激派の妨害により計画は大打撃を受けてしまう。

プロジェクトの責任者であるカーン博士は辛くも難を逃れる。

そしていつの日か救援隊が来ることを願い、救難信号を送り続けながら監視衛星ポッドでの人工冬眠に入る。

そこから2千年の月日が流れた。

襲撃により痛手を受けた人工進化プロジェクトは当初の猿ではなく、ウィルスま

ったく別の生物を強化。その生物は"蜘蛛"だった!

前半は旧人類たちの闘争。それに巻き込まれた科学者カーン博士の受難が描かれます。平行して惑星ではナノウィルスにより自意識を持ち始める蜘蛛たちの歴史が交互に語られます。

そして数千年が過ぎた頃に地球から逃れてきた人類の船が惑星に到達。衛星とコンタクトをとります。

しかし永劫の時を監視衛星で過ごしたカーン博士は静かな狂気に苛まれていました。

ここから旧人類と避難民、蜘蛛たちと物語は複雑に絡み合っていきます。

読みどころとしては蜘蛛たちの進化の過程が偽史として面白いこと。さらに意識が芽生えていくことにより独自の科学を習得したりと思わぬ方向に進む展開。実際の人類史と比較対象として読めるのも興味をそそられました。

非ヒューマノイドの思考というクラシックSFの味を楽しみつつ、蜘蛛の歴史や発展、人類側は避難船のサバイバルや軍事的なところもあり、多様な読み方ができます。

ラストの100頁はノンストップで、ページを捲る手が本当に止まりませんでした。

古きSFマインドを感じさせながら新しい息吹もある。これからの物語のあり方を感じさせる物語でした。

こういう作品を翻訳出版してくれる竹書房の編集者、水上さんには感謝です!

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福田和代

三瀬弘泰さん、ご投稿ありがとうございます!

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吉村弥恵

『やさしい猫』中島京子著 中央公論新社

 

 現実に入管で起きた痛ましい事件を彷彿とさせる物語だと知っていたので、こわごわ読み始めた。一行目から肩の力が抜ける。白く柔らかい布にくるまれて、西日を浴びているような文章だった。普段自分が使っているのと同じ日本語で書かれているのに、文字の手触りや色が別物な小説に、時々出会う。

 

 シングルマザーのミユキと、思春期にさしかかった娘のマヤ、ミユキに恋するクマさん。

ミユキもクマさんに思いを寄せるようになるけれど、ステップファミリーへの道はそう容易じゃない。婚約中にクマさんが失業し、ミユキに言えないまま転職活動をするのもあるあるだ。クマさんは「ええかっこしい」だし。これは、小さな家族ができるまでの、ありふれた物語だ。クマさんがスリランカ人だということを除けば。

 クマさんが外国籍であること、就労ビザであること、在留資格の期限が迫っていること。

これらがありふれた物語を一気に複雑にさせる。ミユキは他の多くの日本人と同じく外国人が日本で暮らすことの背景を知らないし、クマさんは適切なサポートを受けておらず、二重三重の過ちを犯し東京入国管理局に収容されてしまう。

 そこから、現実に名古屋入管に長期収容され亡くなった、ウィシュマさんの事件を思わせる描写があるのだが、この小説はそれを受けて書かれたものではなく、新聞連載中に事件が起きている。ウィシュマさんの前に、軽んじられた命がいくつもあったからこそ書かれた物語なのだ。

 

 文章に光を感じた理由は、ラストで知ることになるのだが、その結末を知らない読み手に伝わるように自在に操れるものなのだろうか。中島京子さんのインタビュー記事を読んで、『やさしい猫』への強い思いを知っても、まだ説明がつかない。同じく、深く印象に残っているいくつかの小説を思い浮かべながら、人生最後の一冊を読むまでには知りたいものだと思う。

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福田和代

吉村さん、ご投稿ありがとうございます!

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野田純

「護衛艦あおぎり 艦長早乙女碧」

時武里帆 新潮文庫

 

本作は、女性幹部自衛官のさらに少数派の女性艦長が主人公です。彼女は一般大学卒で江田島の幹部候補生学校に入校し、艦隊勤務を経て練習艦の艦長となります。海幕で5年間の陸上勤務の後、再度艦長として艦隊勤務に就きます。

戦闘艦の新任艦長の引継ぎ、着任式、訓示から初慣熟訓練に出るまでが克明に記された前半部分は、ほぼノンフィクションです。

着任式後、初の慣熟訓練出港直前に「事故」が発生します。WAVE(女性隊員)の1名が未帰艦であることが判明するのです。

WAVEの先任として自ら未帰艦の隊員を探しに行こうとする碧に対して艦隊司令や副長から「戦闘艦の艦長」としての振舞いを求められます。凹みかける碧は江田島の同期であり僚艦おいらせ艦長小野寺二佐からメモを受け取り、最期まで諦めないこと決め、最終的に欠員なしで初出港となるのです。

異なる背景を持つ乗員ひとりひとりに向き合い、艦内を「家族」としてまとめることの難しさ、プロフェッショナルとしての立ち振る舞い、この組織で同期の横の繋がりの強さ大切さが良くわかります。

それにしても終盤まであおぎりは呉港でもやい索がついたままなんです。

出港準備が整い、錨を上げ、もやい索を解き、転進し、出港していく手順が鮮やかで惚れ惚れします。

やっとのことで出港した慣熟訓練中にさらにもうひとつ出来事があり、物語は新たな展開の予感がします。

呉の街の描写がとてもリアルなんです。読みながら何度も「そうそう」って相槌を入れました。

 

既にシリーズ化が決まっていて、3月28日に続編『試練』がでます。

作者の時武里帆さんは、一般大学卒で幹部候補生学校に入校し、任官後、女性自衛官として初めて遠洋練習航海に参加し、艦隊勤務の経験がある方だそうです。

もしかしたら、私はその遠洋練習航海中に寄港地で時武さんにお会いしているかもしれません。

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福田和代

野田さん、ご投稿ありがとうございます!

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