「マキャヴェッリ語録」
著:塩野七生
出版社:新潮社
マキャベリの著作は色々訳されてますが、当時の情勢を踏まえて書かれているので、
「このメディチさんはどのメディチさんだ……」みたいになって中々大変です。
そこでお薦めなのがこちら。
流石の塩野七生さん、読みやすくマキャベリの理論のエッセンスが味わえます。
「人間には、怖れている者よりも愛している者のほうを、
容赦なく傷つけるという性向があるからだ」
「謙譲の美徳をもってすれば相手の尊大さに勝てると信ずる者は、
誤りを犯すはめにおちいる」
「人間というものは、必要に迫られなければ善を行わないようにできている」
など「マキャベリズム」のイメージ通りな文章が山盛り出てくる一方で、
「市民には、なんのおそれもなく告発権を行使できる体制を、整えてやる必要があるのだ」
「誰からの制約も受けない権力の存在は、それがいかに聖人の手にゆだねられていようと、
国家の利益になることはない」
といった感じで、実に正道の政道(押韻)を説いていたり、
「大国の指導者たちとなると、一致団結することからしてまずむずかしい。
またたとえそれを実現できたとしても、団結を維持しつづけるのが、これまたひどくむずかしい」
「長期にわたって支配下におかれ、その下で生きるのに慣れてしまった人民は、
なにかの偶然でころがりこんできた自由を手にしても、それを活用することができない。
活用する術を知らないのだ」
など現代にも通用する鋭い洞察も。
(女性の位置づけが前時代的ですので、そこは注意が必要です)
僕が好きなのは、
「今日きみが享受している、恋することによって得る喜びは、
明日になればもう受けられないものなのだよ。
それを受けているきみは、わたしにすればイギリスの王よりもうらやましい」
でしょうか。天下国家の話を離れた、人間マキャベリの姿が垣間見えます。
更に興味が出た方は、光文社古典新訳文庫の「君主論」を。
そのメディチさんがどのメディチさんかなど、脚注も充実してます。