『竜血の山』岩井圭也著/中央公論新社
今回はこちらを紹介させていただきます。
時は昭和13年
北海道の山奥で巨大な水銀鉱床を見つけるところから物語は始まります。
発見した鉱山技師は人が住んでいる筈もない奥地で年端もいかない少年を見かける。
なぜこんなところに?
男の子を探すうちに地図には載っていない村落を見つけ出す
なぜこんなところに?
そしてそこにいる村人たちは普通とは違った体質を持つ人々だった
戦前、戦中、戦後
そして高度成長期の公害問題
戦争に欠かせない"水銀"
朝鮮戦争などの特需による経済成長
水銀と巨大鉱床の山に魅せられた人々の栄光と哀しみの人間ドラマが骨太に描かれています。
この作品なのでいわゆる『社会派』とよばれるジャンルになるのでしょうか
私はSFやミステリー、伝奇アクションなどエンタメ要素の高い作品をよく読みます
正直この作品にそのワクワクするような展開はありません
なので『ここが面白い!』と声を大にして言うことはできません
しかし"水銀"という物質に囚われた人々が生きていく様子を目の当たりにするとその生きざまと愛憎の迫力にいつしか時間も忘れて読みふけっていました
読み終えたあとにやってくる深い満足感をぜひ皆さんにも味わっていただきたい
近作『水よ踊れ』も私の読書界隈でかなり評判が良かったようですのでこの機会に読んでみようと思います