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書名:アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険
(著者:宮田珠己/画:網代幸介/出版社:大福書林 2021.10.10)
<おススメコメント>
私がこの本を知ったのは装画を担当された網代幸介さんの個展です。
いいなあと思って手にしたのですがちょっと高かった(2,750円もする)のでその日は諦めて、図書館でリクエストを出して読みました。これが想像以上に面白かったので、結局買いました。
著者は旅エッセイなどを手がけていらっしゃる宮田珠己さん。
苔を愛でながら地味な暮らしをしているアーサー・マンデヴィルのところに、教皇から呼び出しがかかるところから物語スタート。亡き父、ジョン・マンデヴィルが書いた『東方旅行記』(←実在)を読んだ教皇から、プレスター・ジョンの王国を探すように命じられます。しかし、アーサーの知るところでは、父は東方などへは旅をしたことがなく、これはうそっぱちの旅行記。
結局断れず、アーサーは、弟と、使いの修道士の三人で、存在するはずのない王国を探すために旅立ちます。
道々で、父の旅行記をなぞるような奇妙な体験をし、命の危機にさらされながら、一行は旅を続けます。
果たして、プレスター・ジョンの王国は見つかるのか!
ユーモラスな展開と、終盤加速する馬鹿馬鹿しさに、心がくすぐられるような感覚があります。
さらに、この本には網代幸介さんが描いた絵巻物? がついています。網代さんは、小さい頃から自分の中にある世界(通称・アジロ王国)をこの世に紹介する唯一の表現者。網代さんの描く絵は言語・宗教・歴史に至るまであちらの世界のもの。宮田珠己さんの世界観にどう合わせてくるのか? と、これが、まるでこの冒険譚がアジロ王国の出来事であったのかと錯覚するほど調和します。
大島依提亜さんの装幀も相まって、この本全体が胡散臭い旅行記のようなのです。
まだの方、ぜひ読んでみてほしいです。