古谷田奈月『フィールダー』集英社
児童福祉の専門家の黒岩が子どもに『触った』という疑惑。それを守ろうとする担当編集の橘を軸に物語は進む。
橘はオンラインゲームを息抜きとしているが、そこでのプレイヤーとしての立場はヒーラー。オンラインゲームでも誰かを癒している。
そこで知り合ったものを、かわいいと思う。
黒岩の疑惑の対象にも黒岩はかわいいと思う。
猫を溺愛しかわいがる者も出てくる。
かわいいは正義。という言葉も聞かれるが、本当にそれだけで許されてしまうのだろうか。暴力性を孕んだ、一方的な搾取だったりしないのだろうか。
リアルな社会とオンラインという架空の社会。しかしどちらも現実だ。
それらが混じり物語は混沌としていく。
社会問題は日常のそこにある。けれども見ないようにしている人は多い。見ないだけで、在る。それを描くのがうまい古谷田さんの久しぶりの新作長編は読み応えがある。
小児性愛、児童虐待、ルッキズムやソシャゲ中毒などが盛り込まれ、複雑に絡む。
物語はどう収束するのか。
だれもが当事者なんだ。という作者の叫びが聞こえるようだ。