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2023年3月のおススメ

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デジタル・ケイブ

皆さまのおススメ本を、このトピックへの返信として教えてください♪
いちおう、お約束を決めておきますね。

・ひと月に、おひとり一冊まで
・必要な情報は、書名、著者名、出版社名、おススメコメント
 (おススメくださった会員さんのお名前もわかる形で)
・おススメコメントの長さは、800字まで(800字より短いのは問題なし!)
・対象となる本は、書店やネット書店で新刊が手に入るもの(変更しました!)
・ただし、主催者・福田和代の本は除く(笑)
・会員作家さんの本は、ぜひ全力でおススメしてください♪
・締め切り 2023年3月20日(月)

締め切り後、会員の皆様に投票をお願いして、上位3冊をお勧めくださった方に、図書カード5,000円分をお送りいたします。
上位3冊は、おススメコメントとともに、デジタル・ケイブのWebサイトでご紹介させていただきますね!

ご応募お待ちしております♪

7件の返信
十三不塔

『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』長谷敏司

交通事故で右足を失ったダンサーの再起が、家族との葛藤や、ダンスという営為への問い直しとともにじっくりとかつ淡々と描かれる。SFというジャンルから想像されがちな派手な展開はなく、近未来のさほど現代と変わらぬ環境の中で、肉体に囚われる苦しみと愉悦をさまざまに感じ取りながら主人公の講堂恒明は未知のダンスを模索していく、この過程は重苦しく絶望的ですらあって、軽々しくおススメできる作品ではない。

そう、片足を失った主人公が、認知症になっていく父の介護をするシーンは重苦しく切ないし、心の通じない兄の無情さにげんなりさせられる。ただし一方で、彼のもとへ差し込む多くの光があることで、この作品はクライマックスにおいてむしろ祝祭的な軽快さを獲得する。

なのでラストまで頑張って読んで欲しい。最後の父とのダンスセッションには素晴らしいカタルシスがある。

これは極めて人間的な再生の物語だが、それだけにはとどまらない。身体とテクノロジーのきわどい接点の物語でもある。

ここ数年で著しく発達した人工知能というものが、人間の身体や暮しの中でどのようなポジションを示すのか。欠損した身体とそれを補うAI搭載の義足との関係はこの物語のもうひとつの軸だろう。この作品には、統計や検索といった情報論的なアプローチだけではなく、より身体的でダイレクトな示唆を得られるはずだ。

人とテクノロジーの新たな関係は、人間同士の接点にも変化を及ぼすだろう。

人間と道具、家族と社会、芸術と娯楽。

それらの間に横たわる境界線だと思っていたものが幅と厚みをもったゾーンだったということに気付かされる、それは深遠で楽しい発見となるに違いない。

この時代に迷いなく手に取るべき一冊だろう。

返信
佃 俊男

『胃が合うふたり』千早茜/新井見枝香

「胃が合うふたり」とは、作家の千早茜さんによると「食べたいものや食への姿勢が似ていて、気がついたら同じ食卓を囲んでいる。延々と食べ続けられる」間柄のことだそうです。

その千早さんが「非常に胃が合う」と感じたのが、書店員で芥川賞・直木賞の夜に夜に発表する「新井賞」を創設して話題を呼んだ新井さん(現在はエッセイストとして、そしてストリッパーとして活躍されています)。

本書は、気が合う以上に胃が合う「胃袋のソウルメイト」ふたりが、銀座でパフェ巡りをしたり、京都で鰻を堪能したり、果ては歌舞伎町のストリップ劇場でおやつを食べながら観劇したりした経験、そしておふたりの身の回りのことを描いた一冊です。

食エッセイですから、おいしいものがあれもこれもと山ほど出てきます。その感想も読みどころで、真夜中に読んだら、おなかが空きまくってほんとにダメな系の本です。それからおふたりが、所々で語る人間関係や、友情、自分の人生についての考え方も魅力的で、たとえば、

「どんなに相手の幸せを願っていても、一〇〇パーセント手放しで、「わー、すごいね、おめでとう」と言って終わりなら、あまりにも向上心がなさ過ぎる。妬み嫉みとは別の、純粋な刺激を相手から受けないのだとしたら、これほどつまらない友人関係はないだろう。祝う気持ち、誇りに思う気持ち、それだけではなく、もっと自分の芯に深く関わる、簡単には言葉にならない感情が欲しい」(新井見枝香さん)

など、人生を後押ししてくれる言葉や、人生の味わいを深めてくれる言葉がたくさんつまっています。また、おふたりの人柄がよく出た文章なので、『しろがねの葉』(直木賞受賞作)を読む前後に本書を読むと、より楽しめるかもしれません。

ということで『胃が合うふたり』、おすすめします。

返信
佃 俊男

出版社が抜けていましたので追加します。新潮社刊行です

返信
三瀬 弘泰

『川のほとりに立つ者は』寺地はるな著/双葉社

本屋大賞ノミネート作のひとつとして読みました。

寺地はるな先生は初めて読みましたが、ホントに面白かった。

こんなふうに、自分が普段読まないジャンルや作家さんのを読めました。

そう思うと本屋大賞もなかなか良いものですね。

前置きはこれぐらいにして。

ヒロインの原田清瀬は恋人の松木が怪我をし、意識が戻らないと病院から連絡を受ける。

清瀬は松木が怪我をした原因である"揉め事"について、手懸かりを掴むために恋人の部屋を訪れる。

そこで清瀬は松木が書き記したノートを見つける。

そして彼が隠していた秘密に、少しづつ知っていくこととなる。

『当たり前』だと思っていた事が、少しづつ変容していく様は読み応えがあります。

人は外に出している部分と、内に秘めている心、どちらがよりその人らしいのか?

些細なすれ違いや誤解、言葉の足りなさに思い込みなどの齟齬。

ヒロインはそのやり取りに翻弄されていきます。

ここの描写がとてもリアルで、自分の体験とリンクし、ハラハラしました。

対人関係に対する苦悩、人への対処、自分にも心当たりがあり、胸が締め付けられます。

ページ数は200頁ちょっとですが、ストーリーに対しての削ぎ落とし方が絶妙。

そんなに分量がないにもかかわらず、がっちりと『読書した~!』感を得られます。

今まで寺地さんの作品は読んでませんでしたが、俄然この作品にもおかげで過去作も読みたくなりました。

超絶オススメします!

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