水野さちえです。皆さまのおススメコメントに「いいね!」って連打したくなっております。私が紹介したい本は...
・書名:目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
・著者名:川内有緒
・出版社名:集英社インターナショナル
・おススメコメント:
ノンフィクション作家の川内有緒さんが、全盲の美術鑑賞者、白鳥建二さんや友人たちと、全国各地の美術館やアートスポットを巡るお話です。
「目が見えない人が美術作品を『見る』って、どうやって?」と思いますよね。白鳥さんの鑑賞スタイルは、目が見える同行者に「なにが見えるか教えてください」と聞き、同行者たちの言葉を通じて「見る」というものです。
見る作品は現代アートから印象派、仏像まで幅広く、同じ作品の前にいても、同行者たちの見かたや感じかたはさまざまです。白鳥さんと一緒に見るとき、皆さん割と直感的に、ポコポコと言葉を発します。見かたの違いを面白がったり、「いかに見えていないか」という気づきを得たりもします。印象派の作品展をアテンドした美術館スタッフは、白鳥さんと見ることで初めて、それまで何度も見てきたはずの作品で描かれているものが、「湖」ではなく「原っぱ」だと気づいたといいます。
鑑賞の記録だけでなく、白鳥さんや川内さんの人生の振り返りや、障害のこと、差別のこと、日々のできごとなど、話はあちこちに飛んでいきます。読みながら「え、次はどこに行くの?」と、一緒に旅をしている気持ちになりました。とても軽やかに読めます。白鳥さんがなぜ美術鑑賞者になったのかも、徐々に明らかになっていきます。
話はあちこちするものの、私は直球の問いを受け取りました。「あなたは何を見ていますか?」という問いです。読後2か月ほど経つ今も、時々ぼんやり考えます。もちろんこれは受け取りかたのひとつにすぎず、人それぞれ、いろんな読みかたができると思います。アートを見る時と同じように。
ちなみに本書は現時点、電子書籍の設定はないようです。紙の本のみ。中身はもちろん、思わずなでなでしたくなるカバーの感触や、これまたカバーの、裏にどん!と描かれた仕掛けが楽しめます。カラー写真もたっぷり。ぜひともお手にとって、味わってほしい一冊です。